株式会社電通国際情報サービス X(クロス)イノベーション本部 AI トランスフォーメーションセンター部長 深谷勇次様(写真中央左)、同社の X(クロス)イノベーション本部 AI トランスフォーメーションセンター AI コンサルティンググループ 黒田裕伸様(写真左)、弊社の AI・デジタル室 室長 丹下博(写真中央右)、AI・デジタル室 インダストリアルAI開発部 部長 内藤剛人(写真右)にて合同キャリアライブを行いました。
弊社は、矢崎総業が取り組む DX や AI・デジタル室の組織についてをメインのテーマとしてセッションを行いました。
―はじめに、AI・デジタル室のご紹介をお願いします。
丹下:矢崎総業は創業80年を数え、国内シェア1位の商用車のモビリティデータを有し、世界シェアトップクラスのワイヤーハーネス製造を手掛けている会社です。
そのなかでも私たちのAI・デジタル室は最新のAIやデータを活用し、社会課題を解決する新しいビジネスを創出するというミッションと矢崎グループのDXを担うというミッションを持った組織です。
組織の特徴としては「大企業とベンチャーのいいとこ取り」という部分がありますが、安定した経営基盤のなかで、社長直轄の組織として失敗を恐れずにチャレンジができる風土があります。
製造業は精緻にミスなくしっかりと物事を進めていくことが重要ですが、AI、DXといった領域ににおいては未知の部分もありますので、「Fail Fast,Fail Smart」(率先して失敗し、失敗から学ぶ)という文化が根付いています。
これは人事制度にも反映しておりまして、会社全体とは別に独自の給与体系も設けております。これは昨今のIT人材不足を鑑みて、優秀なIT人材を獲得したいという狙いもありますが、自立して成果を出せる方にとってやりがいのある環境を整えるという側面もあります。
また、「家族に誇れる仕事をしよう」という考え方も大事にしております。社会や家族からも認められるような仕事をしていこうという思いも強くもっています。
― 「攻め」のDXというと、テクノロジーをいかに使いこなすかということが重要な要素かと思っていましたが、文化やワークスタイル、バリューといったことを大事にされているんですね。
丹下:最初は何も無いような状態のなかで数人からはじめて、ISID様のようなITベンダーの会社にもサポートいただきながら少しずつ形になってきたところです。
現在では、ビジネスコンサルティング出身者やM&A出身者などのビジネス系の人材も採用しています。この狙いとしては、やはりビジネスの設計があって技術が成り立つものであり、DXの成功につながるという考えがあるからです。
こうした点においても、矢崎総業本体で活躍している人材とはタイプの違う人材が多く在籍していると思います。
これは他の事業会社の方ともよくお話をするテーマでもありますが、やはりDX組織が会社本体を変えていくというのはなかなか難しい側面もあります。
そのため、外部で豊富な経験や知見を持った人材の力も借りて、元々いた社員とお互いをリスペクトしながら一緒に変えていくということも大事だと感じています。
深谷:ISIDもいろいろなお客様のご支援をさせていただきますが、アイディアを考えるときには詳しいスキルを持ったメンバーが一人でぐっと考える。というよりも、チームとして複数名で議論を重ねていくことが重要だと感じています。
丹下:私たちがいま扱っている自動車のデータや交通事故のデータはテラ単位になるのですが、膨大な量のデータをクラウドに移して管理するためにも、クラウドの開発力も必要になってきています。
また、こうしたデータを解析していくためのデータサイエンティストの重要性も高まってきています。日本ではデータサイエンティストが少ないので、育成も大事にしていますが、技術領域とはまた違うところなので、それぞれの領域の連携をより大切にしていかないといけないと感じています。
―ここからは矢崎総業へ中途入社された内藤さんから、実際にAI・デジタル室がどのようなことをしているのかを伺っていきたいと思います。はじめに自己紹介をお願いします。
内藤:私は新卒で大手家電メーカーに入社し、25年ほど前にメタバースのプロジェクト立ち上げに参画して2つの商用サービスの開発をしました。その後は、大手通信キャリアと音楽サービスの立ち上げなどを経験。キャリアの後半ではスマートフォンのカメラアプリの開発や、ネット広告会社の入札エンジンのAI部分の開発を統括してきました。
いろいろな経験をさせていただきましたが、自分のキャリアを考えて少し外に目を向けてみたいと思ったのと、人生の後半になって社会貢献にもうちょっと携わりたいと思っていたところで出会ったのが矢崎総業でした。
そこまで会社のことを知っていたわけではなかったのですが、面接を進めていくなかで、キャリアやマインドが近しい人が多かったので入社を決めました。
内藤:ここからは私の所属部署が取り組んでいる開発について紹介をさせていただきます。
まずAI活用における矢崎総業の優位性ですが、潜在価値の高いデータを保有しています。
総重量が7トン以上のトラックに装着義務があるデジタルタコグラフ(自動車運転時の速度・走行時間・走行距離などの情報を記録する運行記録計)ですが、ここにおいて矢崎総業は国内トップクラスのシェアがありますので、膨大なデータが蓄積されており、さまざまな課題解決に役立てられます。
今回は、こうした膨大なデータをもとに、取り組んでいる事例をご紹介します。
現在の日本において、年間2000~3000件程度のの死亡事故が起きているのですが、一般車による事故は年々減ってきています。一方で残念なことにトラックなどの商用車による事故はなかなか減少していないのが現状です。
また、事故に巻き込まれる年齢帯を見てみると、小学校に上がったばかりの7歳くらいの死亡者数が多いという事実があります。こうした事故を何とかゼロに持っていきたいという思いでサービス開発に取り組んでいます。
先ほどお話したデジタルタコグラフの運行データとしては500年分相当のデータがありますので、どういう運転が事故につながるのかといったことを解析したり、危険な運転をするドライバーがいたらデータをもとに事前の指導を促すことで事故を減らすということにトライをしています。
TRUE SAFEというサービスを現在運送会社向けに販売をしているのですが、エンジンの回転数やハンドルの回転角といったデータをもとに指導の参考にしてもらったり、GPSの運転データを生かしてもらっています。
こういうデータの原石をどう抽出して、ビジネスを創出していけるかという部分においては、データサイエンティストや事業開発を担えるような人材が重要になってきます。
AI・デジタル室ではこのようなプロジェクトが大小含めて30以上あるので、全てを内製するのは難しいため、ITベンダーやフリーランスの方々と一緒に組みながらプロジェクトを進めています。
―DXを社内で推進していくうえで苦労したことはありましたか。
丹下:技術者や私のようなビジネス側の人材も高いものを求められるので難しさはありますね。ただ、まずやってみないと成功もないので「Fail Fast,Fail Smart」は大切にしていますね。あとは、今回ご一緒しているISID様のように外部の力もうまく借りることも重要だと思います。
―AIの施策において海外展開した事例などはありますか。
内藤:サービス自体を海外に展開しているケースはまだ数える程度ですが、矢崎総業の工場は世界に数百カ所あります。そこで働く従業員は20数万人いますが、全体の9割が海外の方ですので、そうした人材の活用や教育、人員配置の最適化という部分においてAIを活用していこうとしています。
―ご自身の過去の経験や業務というものが、どのように生かせそうと感じて転職されたのでしょうか。改めて転職の決め手を教えてください。
内藤:先に、転職の決め手になりますが、私は先ほどお話した通り、社会貢献ができそうなところというのを一つ軸にしていました。そうしたなかでは、自社でゼロからサービスを立ち上げられる環境が良いなと思っていたのですが、丹下の話にあったように失敗を奨励する矢崎総業の文化が良いなと思いました。
あとは、家族に誇れる仕事が出来そうだということも大きかったですね。
Webサービスやアプリの開発などいろいろと手掛けてきましたが、それまで一貫してきたのは技術の目利きをしっかりすること。そして、技術の習得に終わらず、どのように新規事業と接続するかという視点を持ってビジネスサイドとコミュニケーションをとって仕上げることです。そうした経験は矢崎総業でも生かしたいと思っていました。
―AI・デジタル室ではどのような経歴の方が活躍しやすいでしょうか。
丹下:自分の強みがはっきりしている方は採用したいと思いますし、入社後も活躍されていると思います。
ジェネラリストの方をマネージャー職として採用することもありますが、得意な技術領域であったり、尖っているものがあれば私たちもプロジェクトにアサインしやすいですね。
イベントレポートを最後までご覧いただきありがとうございました。
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本レポート内では伝えきれなかった内容もありますので、アーカイブ動画もご覧ください。